全日空の機内誌外国語版『WINGSPAN』10月号で、ウィーンのホイリゲ(ワイン居酒屋)についてのイラストエッセイを担当しました。
私がウィーンで最も気に入っていることのひとつは、都市部と豊かな自然の距離がとても近いこと。賑やかな街中から地下鉄やトラムで2、30分も移動すれば、ワイン畑が広がっています。日当りのいい丘にある長閑なワイン畑の斜面から、眼下に広がるウィーンの街中の景色を間近に眺める度に、「なんてウィーンは恵まれた場所なのでしょう」と、感激します。その上、そんな絶景を楽しみながら、地元の仲間や時に見知らぬ人たちと楽しくワインが飲めるなんて、そこは「天国」に違いありません(笑)。
ウィーンの秋は、そんな幸せを楽しむ季節。自然の中をハイキングしながらホイリゲが提供するワインが飲める『ワインハイキング』をはじめ、ウィーン近郊ではワインにまつわるいろんなイベントが行われています。
お祭りのようなイベントも楽しいですが、それ以上にホイリゲが、特にウィーンの郊外に暮らす人々の日常の大切な場所になっていることが、私にはとても興味深く、魅力的なことでした。
ワイン居酒屋といえども、小さい子供を連れた家族連れから、犬と一緒に散歩の途中に立ち寄る老夫婦まで、さまざまな人々が集まる様子は、むしろ「ワインファミレス」とよびたいくらいカジュアルでオープン。住宅地の中にひっそりとたたずむ隠れ家のようなホイリゲでは、観光客らしき人々はあまり見かけませんが、それだけに旅行者にとって新鮮な体験になると思います。
私が今回、記事内でご紹介したのは、観光客にも人気のカーレンベルグKahlenbergやドナウ川寄りではなく、高い評価の老舗ホイリゲが集まるマウワーMauerや、オタックリングOttakring近郊。この秋は、地元の人々に混じって大きなテーブルを囲みながら、新酒のワインをぜひ楽しんでみてください。