トビイ ルツのTraveling Mind

神は細部に宿る

ヨーロッパの教会にいくと、よく目にする聖書のお話の場面が描かれたステンドグラス。子供から大人まで、教会に集う文字の読めない人々も、お話を理解することができるために考え出されたと、初めて聞いた時は、絵の力ってすごいんだなーと思いました。
そして、世界のどこの国でも写真がまだない時代は、絵が記録手段。描き手もレポーター/語り部として活躍していたんですね。その点、イタリア版画家ジャック・カロは、伝説的に饒舌なレポーターといえるかもしれません。先日、国立西洋美術館で行われているジャック・カロ展を観てきました。メディチ家の宮廷附き版画家として若い頃から活躍したそうですが、王から命を受けて作成したであろう作品の数々は、圧巻の描写力。エッチングとよばれる先の細い針のような道具で、銅板に絵を描いていく版画なのですが、米粒くらいの大きさの人物や、風景画の装飾的な建物の細部も、丁寧に描写してあります。
宮廷の風景、行進、槍試合、中でも戦争に関しては、敵に科せられた目を背けたくなるような残酷な刑の様子まで細かに描かれていて、マニアックさにヒェーと心の中で声をあげてしまいました。略奪や暴動の喧騒の瞬間を、まるでカメラで切り取ったよう。側で冷静にスケッチしていたんでしょうか。
さらに興味深かったのは、カロが描いたアウトサイダーとよばれる人々です。体に障害を負った道化師や、街でヴァイオリンやリュートを弾く大道芸人、乞食、老女など、中世の時代に絵の対象としてとりあげられることのなかった人々の、服装からふるまいまで細かに描かれているのは、非常に貴重な記録に違いありません。かなりユニークな観察眼を持っていたんでしょうね。

あまりに細かい部分まで描かれているので、会場では観賞用の虫眼鏡まで用意されているほど。カロはわずか40年余りの生涯に1400点以上もの作品を遺したそうですが、展示作品だけでも相当な数です。作品に近づいて息を詰めて細部を鑑賞していくと、すっかり消耗してしまいました。
制作にかなりの手間を要する銅版画だけに、作者のカロのスタミナは超人的。というよりも、神的な技の鍛錬に、生身の命を削って描いていたのかな。

「神は細部に宿る」

この言葉を思い出しました。
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by rutsu_tobii | 2014-05-31 23:59 | アート&デザイン | Comments(0)
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トビイ ルツ|TOBII & RUTSU「ペン一本でどこでも行ける」生活に憧れるイラストレーター&モノ書きです
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