トビイ ルツのTraveling Mind

クリムトのお墓

友人のお墓参りのために訪れたHiezingヒーツィングの墓地で、画家クリムトのお墓を見つけました。

シューンブルン宮殿の広大な敷地に隣接する墓地。ここにはクリムトの他にも建築家のオットー・ワグナーの墓があることを、墓地で配布されていた専用地図で初めて知りました。ちなみにクリムトもオットー・ワグナーも共に今年がちょうど没後100周年。お墓参りにはいいタイミングです。

墓は住所のように区画ごとに番号が割り当てられていて、見つけやすくなっています。クリムトの墓もすぐに見つかりました。
クリムトのお墓_d0069964_14245020.jpg
大きく絢爛豪華なクリムトの作品とは違って、彼の墓石のデザインは小さめでいたってシンプル。墓標の文字は、クリムトの絵のサインと同じ書体でした。

供えられた鉢植えの花には絵筆が数本ささっていて、思わずほほえんでしまいます。そこには「チェコ人はあなたを忘れない」と書かれたチェコの国旗と同じ青、赤、白の3色のリボンが結びつけられていました。クリムトのルーツはチェコ(ボヘミア)だったのですね。

お供えのキャンドルがまた素敵なのです。一般的に使われるのは、コップ状の赤い器に入ったキャンドルなのですが、白いキャンドルに手描きとおぼしき天使の絵と共にメッセージが書かれてありました。「死は肉体の限界であり、愛の限界ではない」と。

芸術への愛、ウィーンへの愛、私生活における女性たちへの愛、そして、ファンからの愛。クリムトの人生からいろんな愛が連想されますが、彼にふさわしいロマンチックなキャンドルです。クリムトの作品を鑑賞するのと同じくらい興味深いお墓参りでした。

宗教や慣習の違いもあるのでしょうが、ヨーロッパのお墓のスタイルは実にさまざま。特に個人の墓の場合、人物同様にお墓も「十墓十色」で、たとえ故人を知らなくても、お墓を見ればその人がどんな人生を送っていたのかわかるような、象徴的な姿をしています。
アート作品のような墓ばかりで、まるで美術館にいるように長居してしまうこともしばしば。故人の墓から彼や彼女らの人生に考えをめぐらせ、その度に私はどこで、どんなお墓に入るのだろうか、とぼんやり考えるのです。

ちなみにシューベルトやベートーベンなど、膨大な数のオーストリアの著名人の墓があるウィーンの中央墓地も、ウィーンの観光名所のひとつ。ここでも専用地図が用意されています。広大な敷地のマンモス墓地なので迷ったら大変ですからね!ウィーンのちょっと変わったメメントモリな旅先として、みなさんにおすすめしています。




by rutsu_tobii | 2018-09-16 23:59 | カルチャー

トビイ ルツ|TOBII & RUTSU「ペン一本でどこでも行ける」生活に憧れるイラストレーター&モノ書きです
by rutsu_tobii

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